SVX日記
2005-03-10(Thu) テレビの影響について考える
今に始まった類のニュースではないが、大阪府が「残虐ゲームソフト」の規制を検討しているらしい。まぁ、大阪府としては「何らかの対策」をしなければ収まらんというトコロなのか知らんが、どーしてまぁ、こーも短絡的なのであろうか。文字通り、頭の回路がショートしているとしか思えない。
オイラはゲームが好きだし、全部とはいわないがゲームはとても知的な遊びであると考えている。「ゲームは子供のモノ」などと半ばサゲすむような評価をゲームに与える人は、よいゲームに出会っていないか、よほど知性の低い人だと考えられる。多くのゲームはその中に定義される現実を持ち、その中のルールに従って勝利を収めるのが目的だ。ゲームを勝利に導くためには、ゲーム内の現実やルールを正しく把握した上で、激しく頭を使う必要がある。リアルタイム性の高いアクションゲームでは、それに加えてすばやい判断も必要だ。これが知的でなくてなんであろうか。さすがに残虐要素まで知的だとはいわないが、雰囲気作りに大切な要素であるコトに違いない。
そーゆーことも理解しないで、見た目の残虐性からすぐに規制に結びつけるのは、頭の悪い人のやることである。おそらく頭の悪い人に対し、逆らう提案をしても無駄だろう。それでは百歩譲って「残虐性」とは別の軸に存在する、ことさら人に大きな影響を及ぼす概念を提案したい。それは「現実性」である。
ホラー映画などの怖さを一概にランク付けすることはできないが、恐ろしい化け物が一瞬で岩を溶かしてしまったとする。これは怖いか? 怖くない。では、机でなく犬なら? ちょっと怖い。犬でなく人間なら? もっと怖い。つまり、ホラー映画の怖さとは、自分の現実に近い概念ほど大きいといえるのである。子供だましの特撮よりは、リアルなCGの方がより怖くなる。これもリアリティが高いほど、視聴者の現実に近づきやすいからである。トップガンでトムクルーズが戦闘機を撃墜する映像よりも、ビルに突っ込む旅客機の映像のほうが圧倒的に怖いのもこういう理由による。
そうなのである。ゲームソフトなんかよりもはるかに一般人に近く、最も現実性の高いメディアは「ニュース」なのである。ニュース番組は放送時間の規制さえなく、次々にエグい内容を視聴者に垂れ流し続けるのである。これが視聴者の行動に影響を及ぼさないワケがないではないか。包丁で人を殺す決定的な映像こそ流さないものの、活字で出れば同じことなのである。
そもそも、ゲームの中でマシンガンを乱射しビシバシと人を撃ちまくったからといって、それを現実と混乱するアホがどれだけいるというのか? それよりは事件をニュースで知って、それを現実にマネしたくなるアホが出現する可能性のほうが圧倒的に高いコトは容易に想像がつく。事実、こないだ殺傷事件を起こした犯人は、その前に起こった殺傷事件の現場を訪れていたそうである。しかも「現実の事件の模倣」の例は今回が初めてではない。証拠はないが、最近の事件だって「オレもやってみよう」的なものが大半であると考えられる。これがニュースの悪影響でなくてなんだというのか? 大阪府はこの事実をどう考えているのか? 知った上で敢えて無視しているのか?
ゲームはたかが「現実世界を模倣した仮想世界を提供する」メディアである。一方でニュースは「広い現実世界に点在するとびきりの悪意を広く一般に浸透させる」メディアなのである。そもそも、殺傷事件を報じる必要性に疑問を投げかけたい。そんなエグい事件、報じなくたって誰も損したりしないだろ? 報道は崇高な仕事なんてチャンチャラおかしい。少なくとも自然に情報に触れてしまいやすいテレビニュースについては、最低でも放送時間を考えて放送するべきである。8時や9時のニュースのトップに殺傷事件を持ってくれば、当然のように子供が観ている可能性もあり、これは始末悪いコトこの上ない。事実だからといって四六時中垂れ流さなければならない理由はどこにもないハズである。
オマケに最近ありがちな、遺族や一般の関係者などによる証言の映像。あれも非常によろしくない。ホイホイ出たり喋ったりしてんじゃねーよ、といいたい。あれもニュースの現実感を増すための一手段なのである。いい加減に番組制作側に利用されているだけだと気づいてほしい。事件の当事者から少し離れた遺族や一般の関係者ほど、視聴者の身近に感じる人間はいないのである。
子供を取り巻く環境は大きく変化している。一方で、キレやすいとか子供の性格の変化について疑問の声を上げる大人がいる。環境を変化させているのは当の大人であることになぜ気づかないのか。なんでも有害だと決め付けて、子供の世界からマイナスするより、むしろ無くしてしまったプラス要素を復活させるコトを考えるべきである。
例えば子供向け番組である。昔は夕方5〜7時は多くの局でアニメなどを放送していたモノだ。日本昔ばなしや世界名作劇場はもちろん、鉄腕アトムに始まり、巨人の星やガンダムであっても、教育効果は意外なほど高いハズだ。むしろ、子供の道徳感のほとんどは子供向けのサブカルチャーから得られるモノだとオイラは考えている。現代はどうか? 多くの子供は塾に通わされ、子供向け番組は絶滅寸前である。今の子供は、人との助け合いや、弱者への思いやり、友情などの概念をドコから学んでいるのであろうか?
日本人なら星飛雄馬の所属球団を知らない人はいない一方で、オーストラリアや英国では自らをジェダイの信者だと宣言する人が多数存在するという。ここいらで、テレビ番組の影響の大きさを別の角度から考え直すべきである。考え直すべきだったら、考え直すべきである。