SVX日記
2023-03-01(Wed) 九四ドライブ11日目
今日は5時半起き。宿は朝食付きプランなのでスタンバイして6時45分の開場と同時に開始。7時半発。今日は、予期せぬ事態に備えて時間を温存しておく必要があるのだ。余談だが、星新一の小説作品に「便利なカバン」という短編がある。旅の友であるスーツケースが自走するばかりでなく、目覚まし、忘れ物防止、精算、撮影スポットの紹介までしてくれる、というもの。オチは、旅の醍醐味はアクシデントなのにな……という皮肉。とても印象に残っている話だ。しかし、予期せぬ事態が醍醐味だとするならば、事前に綿密すぎる計画を立てることは、それに反することだ。でも、自分は割としっかりと計画を立てるタイプなんだよな(たぶん)。とはいえ、今日のコースは本当にゴーかアボートか迷っている……これが旅の醍醐味なのかもしれんなw。
まずは、一ツ葉道路南線、北線を乗り継いで市内の混雑をパスする。基本、有料道路は使わないポリシであるが、走ってみたい道を走る分にはその限りではない。しばらく行くと、妙に目や鼻が痛くなってきた。花粉の症状だ。花粉症歴は長いが、未だに症状の出方の法則がよくわからない。まぁ、この季節にオープンで走って無症状のワケがないのだが、むしろ屋内のが症状がヒドくなる傾向があるのがわからない。とりあえず、対アレルギー薬と兼ねているフェキソフェナジンを飲む。
気づくと線路と並走している。日豊本線だ。実は日豊本線には強い思い入れがある。自分が小学生の頃のブルートレインブームで「はやぶさは鹿児島本線経由西鹿児島行き」「富士は日豊本線経由で西鹿児島行き」と何度もノートに書き写したりしていたのだ。特に日本最長距離を運転する富士には憧れがあった。ここをあの「富士」が走っていたのだなぁ……と、感慨に浸っていると、その更に向こう側に延々と高架が走っていて、その上にソーラーパネルが乗っている。なんだあれは? 宮崎にも、名古屋の南方貨物線みたいな未成線があったのか? と、思って後で調べたら、リニアの実験線だったらしい。リニアの実験線というと山梨が有名だがそれはVer.2で、実はVer.1が宮崎にあったのだ。にしても、怖いほど延々と続く。全長7kmらしいが、実際に目にするとその規模に驚かされる。その後、道の駅日向で休憩。昨日のクーポンの残高で宮崎牛ふりかけを購入。で、道の駅の裏の日豊本線をしげしげと眺める。
さて、ここで最初の勝負だ。延岡の手前から、阿蘇山に向かって進路をとる。これまでずっと、海っぺりを走ってきたわけだが、はるばる九州まで来たのに、絶景ドライブロードといえば必ず十指に入る「やまなみハイウェイ」を走らないわけにはいかないだろうと。しかし、季節は冬。この旅行に旅立つ何週間も前から、路面状況について情報収集を続けていたのだが、チェーン規制されたり、解除されたりを繰り返し、まったく予断を許さない。しかし、やまなみハイウェイの始点である、宮地駅まで向かうことに決める。決して無理はしないと、自らに言い聞かせつつ。
国道10号から、何の変哲もない交差点を曲がり国道388号に入る。やはり何の変哲もない2車線の道だが、じわじわと高度を上げていく。突然に1車線になって不安を感じるも、雪の気配はない。国道218号に移動すると、高千穂という地名が現れ始める。そうか、この先に高千穂があるのか。高千穂というと、自分はダーティペアを著した高千穂遥氏の印象が強いが、それはさておいても「高千穂」という語感がすごく好きだ。
山道なのに快走路が続き、道の駅高千穂という案内が目に入る。これは寄らねばなるまい。まずは、非常に目立つデカい顔が目に入った。天鈿女命(あめのうずめのみこと)だそうだ。高千穂には、かの天岩戸(あまのいわと)にちなむ天岩戸神社があり、それにちなむオブジェのようだ。ユーモラスな顔なのは、彼女がハダカ踊りをした女神だからか。その顔の裏側には、天手力男命(あめのたぢからおのみこと)のイカツい顔があり、彼が岩戸をこじ開けた神らしい。肝心の天照大神(あまてらすおおみかみ)じゃなく、脇役二人のオブジェというのが渋いチョイスだな。
道の駅の売店では、何かグッズが欲しかったが特に惹かれるものもなく、なんとなく観光案内所に寄ったところ、高千穂あまてらす鉄道というパンフが目に入った。あ、そういえば途中で廃線跡っぽい高架をくぐったな、と思って案内所のお姉さんに聞くと、それはやはり廃線跡で、現在はトロッコ列車のような観光列車を走らせているのがそれだという。よくあるパターンだが、それで採算が取れるならよい話だ。時間がないので乗れないが、興味深い話が聞けた。
さて、そこからは阿蘇の外輪山へ向かう。例によって、どんどん高度を上げていくので不安になるが、雪の気配はない。峠を越え下りになって一安心。宮地駅までは問題なく向かえそうだ。硫黄の匂いと共に、パァっと雄大な景色が広がるのが感動的だ。来てよかったなぁ。市街地に下りて宮地駅に向かう。事前にチェックしておいた、まかない家MATSUというレストランで昼飯。せっかくなので奮発して赤牛丼というのを食う。ふむ、まぁまぁだな。転車台があるという宮地駅を散策してクルマに戻る。
そしてここからが本当の勝負だ。というのも、やまなみハイウェイの路面状況について調べていたら、3日前の時点で雪のために通過を断念している動画を見つけてしまったのだ。本格的に高度を上げる前の国道442号との交点でこの状態。その後、好天が続いてはいるが、そんなに都合よく雪が溶けるとは限らない。しかし、ダメなら引き返せばいい。ゴーだ。宮地駅から北へ、県道40号との交点を超え、路面状態に変化なし。その先も大丈夫だ。うん。うん。お。この先はすぐに国道442号との交点だが、ないぞ。雪が。なんと、まったく雪がない。助かった。なんという幸運。
しかし、安心はできない。国道442号との交点の先、急激に高度が上がる途中のやまなみハイウェイ展望台で一息つく。この先も心配と言えば心配なのだ。山を超えれば北斜面だ。雪が残っている可能性があるが、下り坂に差し掛かってしまえば引き返すことが困難になるからだ。が、下りてくる車がどれも普通っぽい。スタッドレスかどうかの判別は難しいが、ホイールの様子からそれっぽくない。さらにゴーだ。で、結局、北斜面も路肩にわずかに雪がある程度で、路面には皆無。そのまま順調に高度が下がっていく。危ない区間は抜けたな。
時間にも余裕がありそうなんで、事前にチェックしておいた九重夢大吊橋を観に行く。これ系のトマソン歩道大吊橋は、既に類似のスポットをいくつも訪れているので、いい加減に飽きているのだが、この吊橋にも特筆するような感じも受けず、金を出してまで渡らず、橋を高台から眺めるだけで済ませた。
先へ進み、ちょっと道をチェックしようと駐めた空地の向かいが、ちょうど県道11号の酷道区間だった。それほどではないが、なんでここだけこんななんだ、という感じ。イワユルやまなみハイウェイには、この部分は含まれず、快走路が代替するようだ。そのイワユルやまなみハイウェイに復帰してすぐの狭霧台駐車場で休憩。そこから少し上り、その後はずっと下りだ。別府の市街地に入るが、同じ調子で下っていく。別府は緩い斜面に張り付いた街なのだなぁ。
別府の市街地を離れ、国道10号を東へ。道は非常に広く、走りやすくて、確かに「かんたん」に運転できる……という標識ではなく「かんたん」という地名のようだ。漢字だと「菡萏」。そら読めん。そこから、県道22号に移ってギリギリまで進むと、今日の宿であるHOTEL AZ大分幸崎店だ。チェックインしたら、すぐ散歩に出る。
特段の行き先はないのだが、すぐソコのローソンで済ますのもつまらないので、スルーする。コメリがあったので、洗車用の折りたたみ式バケツが売ってないかと探すと、手頃なのがあったので購入。少し先に、現地スーパーっぽいのが見つかったのでワクワクしながら向かったのだが開いてなかった。残念。そのまま海っぺりまで歩き、暗くなってきたので引き返し、結局、すぐソコのローソンで晩飯を購入、ホテルに戻る。