SVX日記

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2019-03-12(Tue) ザ・ボーカルスクール・ハーフ・イヤーズ・アフター

  あまり、ハッキリとは書いてなかったが、実はここんところ週一でボーカルスクールに通って歌のレッスンを受けている。で、それを始めてから、ちょうど半年が経つのだが、我ながら「かなり上手くなってきた」と感じているので、覚え書きとして、これまでの経緯や、現時点までにわかってきたことなどについて記しておきたい。

  自分が受けているレッスンは60分。内容は、前半が発声練習。後半が課題曲練習。発声練習の部では、喉の筋肉を鍛える方法を教わる。基本的に、言われたとおりにマネしてみて、ダメ出しされ、それを踏まえて家で練習、次回にまたマネしてみて、ダメ出し……という繰り返し。あまり、ハッキリとした練習の目的を説明されないので、ずっと半信半疑だったが、いつのまにか驚くほど音域が延びていたので、練習方法に間違いはなかったようだ。ちなみに、先生はミックスボイスという概念に懐疑的らしく、その話題は一切ない。しかし、それで効果は出ているし、それで問題ないと思っている。

  課題曲練習の部では、自分の好きな曲を持っていき、歌ってはダメ出しを繰り返す。持っていく曲は、普通の歌入りのオリジナル音源。可能であれば、カラオケ音源も。別に先生が知らない曲であっても、その場でオリジナルの歌い方を元に指摘してくれるので問題はなく、それで十分に上達を実感できている。この指摘はかなり的確で、課題曲練習の部は、歌い方を学ぶというだけでなく、オリジナル音源から歌い方の特徴を聴き取る方法を学ぶ、という側面も大きい。

  自分の最近の練習パターンは、週の中頃に1時間のレッスン、レッスン内容を録音しておいて復習、週の後半にカラオケ屋で1時間の好きな曲の練習、録音しておいて自ら修正、週末は車で数時間ドライブし、その間ずっと発声練習と好きな曲の練習、週の前半にカラオケ屋で1時間の練習……というパターンの繰り返し。おそらく、恐ろしいほど熱心に取り組んでいる方ではないかと思う。

  レッスン費ほか、費用はかなりかかっているが、自助努力もあって、相応の結果が出ていることを実感している。人に聴かせる機会はないが、既にカラオケ屋でこれだけ歌えれば恥ずかしくはない、というレベルは軽く凌駕していると思っている。

  で、以降は、現時点までにわかってきたことなどについて記す。あくまで自分の理解であるが。

  まず「ボイストレーニング」とは「発声器官」を鍛えることである、ということ。具体的に言うと「声帯の周囲の筋肉」を鍛えること。それにより、高音が出るようになるし、ビブラート、シャウトを含め、声の出し方のバリエーションも増える。つまり、単に音域を拡げることに留まらず、声域を拡げること、であるといえる。

  とあるボイトレ動画に「『自分は声が生まれつき悪い』という人に「生まれつきモデル歩きする人はいない」」という指摘があったが、そのとおりだと思う。声質は、トレーニングを続け、声の出し方のバリエーションを増やし、その中から魅力的な声を選択することで、改善していけるからだ。

  で、魔法のワード「ミックスボイス」。これさえ出せれば、どんな歌も上手に歌える……というのは、まったくの勘違いであることを実感している。

  高音が出せず、音域が狭ければ、歌える歌が限定されるのは、確かにそのとおりではあるが、音域が広くても、音程が合わせられる歌が増えるだけのことで、上手く歌えるようになるわけではない。

  極端な例だが、ファミコンのピコピコ音源を思い浮かべるといい。音域は十分に広く、プログラムが正しければ発音は正確だろうが、それがピコピコであればピコピコ以上という印象を持つことはない。音色や抑揚が重要なのだ。

  そこで重要になるのが、オリジナルがどう歌っているのか、よく聴くことだ。抑揚はもちろん、ビブラートの有無やかけ方、キーオフのタイミングや形、シャウトも含めどんな声色を使っているのか、息継ぎのタイミング、などなど。当然、できるだけそれを再現するのが基本だ。

  自分の例だと、最初の大きな変化は、練習を始めて約2ヶ月後に「だいぶマシになったな」と感じ「自分の歌を録音して聴いてもキモくなくなった」ことだった。先にも書いたが、課題のあることは感じているので聞き惚れているというわけではないし、他人が聴かせてキモくないという自信があるわけでもないが、自分で楽しく聴けるようになったのは大きい。

  最近は、歌ってみたい歌をまず歌い、後から聴き返し、気になる部分をオリジナルと聴き比べ、歌詞カードにメモしつつ、必要に応じてキーを上下する、という形で取り組んでいる。ちなみに、カラオケ屋ではエコーに頼らないようマイクは使わないばかりか、画面も見ない。メモ書きを加えた歌詞カードを見て歌う。画面に出る歌詞だと、色の変わるタイミングに惑わされる場合があるので、その回避にもなる。

  歌う、聴き返す、聴き比べる、歌詞カードにメモする、を繰り返すのは楽しく、いまのところ常に上がり調子なので、それをどんどん繰り返したくなり、好循環が続いている。最初は無理だと思っても、それを繰り返すうち不思議とマシになってくるのだ。それは、努力と言えば、努力になるのだろうが、楽しい努力は楽しいだけであり、それは上達への一番の近道であろう。

  こうなると、知っている曲をパッとカラオケで歌うというのがおかしな行為のようにすら思えてくる。

  話は逸れるが、ちょっと前にYouTubeで見たボイストレーニング系の動画がイラっとくる内容だった。「『ミックスボイス』を出すのに必要なのはコツだけ。喉の筋肉を鍛える必要なんてない。ウチにレッスンに来れば、誰でもすぐに出せるようにしてあげる。巷のスクールはどこも卑劣なことをしている。すぐに上達させると、すぐヤメてしまい損をするため、ワザとゆっくり教えているからだ」というような主旨。

  しかし、自助努力を一切せず、漫然と通い、上達しないことをスクールのせいにしてすぐにヤメてしまう客もいるだろうことを考えれば、スクール側は、効果を実感させるべく、少しでも上達させようと必死であろうことは想像に難くない。まぁ「『ミックスボイス』を出せるようになればゴール」みたいな、低レベルな動画を作っている輩の言い出しそうなディスりではあるが。

  それにしても声域(≠音域)が広がると、歌える曲が増えて楽しい。これまで素人くさい感じにしか聴こえなかった曲が、それっぽく聴こえるようになってくるのだ。それでも、こりゃまだ無理、という曲も少なくはないのだが。

  また、これは人によるのかもしれないが、声域が広がったからか、シャウトのかけ方も変わってきた。普通の声とシャウトとの移動が滑らかになり、切り替えるという感じではなくなった。そして、シャウトを多少はさみつつ、数時間歌い続けても、ほとんど喉が枯れなくなった。自分の声帯は鉄でできているのかと思うほどだ。

  それと、ボイストレーニングの副作用なのか、エッジボイスの領域が広がるという現象も起きている。以前と同様に小声で話すと、ブツブツとした声になってしまうのだ。多少は声を張って会話しなければならなくなってしまった。声帯の張りが強くなったからなのか、より声が響くようになり、声量も増した気がするので、悪い変化とは思ってないが。

  しかし、考えてみれば、歌なんて「タイミングよく器用に声帯を震わすだけのスキル」なのに、それで人の心に訴えかけられるってのは、まことに興味深いことだ。鳥の囀りや虫の声の延長じゃねぇかと考えると、なんだか微妙な気もするのだけれど。

  自分としては、この調子で上達を続け、なんらかの形での歌い手を目指したい。点数などには一片の興味もないので、カラオケキングは眼中にない。最終的には、歌で戦争を終わらせることが目標だな。その過程でイライラしている飛行機の乗客を歌でなだめることもあるかもしれない。まぁ、手始めに、カミさんとガキのケンカを歌で止めるところから始めてみるか……。