SVX日記

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2019-07-18(Thu) イヤホン「EARNiNE EN120」を選びぬく

  長らく愛用していたイヤホンのプラグの付け根付近が断線してしまったらしい。ちょっと前から怪しかったのだが、とうとう片側から音が出なくなってしまった。プラグ部分にケーブルを強く押し込むと一時的に音は出るが、そんなんじゃ使い物にならない。

  長らく愛用していたイヤホンとは、ZERO AUDIO社の「カルボ テノーレ(CARBO TENORE)」。評判を鵜呑みにして試聴もせずポチったものだ。途中ブランクを挟んで、通算365日以上は使った気がする。基本、ケーブルはu型が好みなのだが、この製品はY型なので、無理矢理に首の後ろから周して使っていて、不満といえばそれくらいだった。

  最近の主な用途としては「自分の歌を録音し、聴き返す」ことがほとんど、というやや変態的な状態だったが、その用途に対しても特段の不満はなかった。

  だが、断線しては仕方ない。せっかくだから、これを機に無線環境に移行するか。通勤電車がうるさいこともあるし、Bluetooth、かつ、ノイズキャンセリングだな、と、あまり深く考えずにSONYの「MDR-EX31BN」をチョイス。んが……

  「な、なんなんだ……この音は」

  これまで、音質になんて何のコダわりもなかったのだが、このイヤホンだと自分の声が埋もれてロクに聴こえやしない。聴いていること自体が苦痛なレベルだ。売り物っていうレベルじゃなくないか、これって?

  しかし、よくよく調べると、それはいわゆる「ドンシャリ」というタイプのイヤホンらしい。どうやら単純に、良いか、悪いか、という問題ではなく、そういう特性を、好むか、好まないか、という問題らしい。

  歌を目指すものにとっては常識なのだが、歌を上達するためには、先行して「耳を育てる」必要がある。いつの間にか、自分の耳は「かなり育っていた」ということなのだろう。たかがイヤホンにこれほどの違いがあったなんて。

  ずっと「ドンシャリ」とか、イヤホンマニアは細けぇなぁ、などと思っていたが、完全に反省である。今更ながら、一般的な話として、自分にその価値がわからないからと言って、それをバカにする態度を採るのは、みっともない振る舞いであるということを実感させられた。まさに、バカっていうヤツがバカっていうヤツである。

  結局「MDR-EX31BN」は、再生/送りボタンの動作が不安定という致命的な問題もあったので、返品してしまった。

  というわけで、代わりとなるイヤホンの調達が必要である事態は継続しているのだが、音質によっては買っても無駄になる、という事実に直面してしまった以上、次の製品選びには極めて慎重にならざるを得ない。

  で、ネットでの情報収集を始めたのだが……これがまったく参考にならない。というのも「透き通るような高音」だの「湧き上がるような低音」だの、いわゆる「官能評価」しかないからだ。そもそもメーカサイトがそうだし、その方面では最強っぽい「eイヤホン」もそうだ。まぁ、実質、周波数特性などを計測したとして、それから音が推測できるかといえば微妙な気もする。そのために大量に試聴器を常設しとるんじゃ、ということなのだろうから「eイヤホン」的には辻褄は合っているのだが。

  というわけで、幸い「eイヤホン」の実店舗が近所なので、サッサと訪れてみることにした。ちょっと前まで「イヤホンマニア向けのややキモイ店」などと思っていたが、まったく申し訳ない話である。反省。

  正直、自分自身がややミミクソがちなので、展示してあるカナル型イヤホンを耳にツッコむのに抵抗がないわけでもないが、意を決してツッコみまくることにする。

  音楽のソースはPSPに入れてある「オレの歌.mp3」。そんな粗末なモンで試聴しにくるヤツなんてオマエくらいだ、と言われそうではあるが……ほっといてくれッ!

  予算的には出しても1万円程度ということで、主に5000円前後の製品を試しまくる……いや……しかし……違うモンなんだなぁ。ソースが同じなのにこんなに違っていいのかよ。化粧とかいうレベルじゃなく、整形っていうレベルで違っている。

  次から次へと試していくと、やはり値段に比例する傾向がないわけではない。んが、高価で、音が整っている感じがしても、好きじゃない、というのがあるのも事実。せっかくガチで試聴に来ているのだから、可能な限り自分の耳だけを頼りに判断を進めるべきだ。

  すると、一般的評価の高さから、結局はソレに落ち着くかもしれんな、とまで思っていた「SHURE SE215」は軽く脱落。別に悪くもないのだろうが、特段の印象はなかった。

  結局、軽く30本以上は試聴したと思うが、唸りながら複数回の試聴を繰り返したのは以下くらい。

  ・「ZERO BASS-03

  ZERO AUDIO社の「カルボ テノーレ(CARBO TENORE)」を長らく愛用していた、という先入観をできるだけ排除しても、やはり浮き上がってきたのがZERO AUDIO社のアイテムだった。名前から自明だが「ボヨーン」と心地いい低音が顕著に現れる。だが、ぜんぜんボーカル(つまりはオレの声)を邪魔せず、悪くない。しかし、その低音が必要かと言うとそうでもない気もする。やや気になるのはジャックの作りが断線したテノーレと同じというところ。

  ・「final E2000

  普通にキレイにボーカルが鳴る。低音域もちょうどいい感じ。しかし、能率が悪いのか、PSPだと最大音量にしてもモノ足りない音量に留まってしまう。ちなみに、E2000が割とイイのだからfinal E3000はどうだろう、と、そちらも試聴したのだが、音の傾向はまるで違って問題外。そういうモンなのね。

  低音特化みたいな名前だが、上のBASS-03よりも低音は控えめ。でもって、同じように低音がボーカルを邪魔せず、悪くない。単純にテノーレに低音を足した感じで、ネガは感じない。名前に似合わず、ボーカルの解像感は他に比べ抜群という印象。

  長らく愛用していたアイテムなのに、改めて試聴する意味があるかと言われれば、大いにある。なにせ、改めて「これはイイ」と思えたからだ。自分の耳がそれなりの確固たる判断基準を持ち合わせていることの確認になった……が、困った……これをリピートするのはつまらなすぎる。手元のヤツの断線したジャック部分を無理矢理に直して二軍にしようと思っているということもあるし。

  ・「EARNiNE EN120

  かなりテノーレのリピートに気持ちが傾きかけたところで、なにげにコレを聴いてドギモを抜かれた。ボーカルの解像度がハンパない。とはいえ、いくらなんでも低音が控えめ過ぎではないだろうか。高音も突き刺さるギリギリ付近という、ハデな音。これ、長く聴いていられるんだろうか。

  画像の説明

  なにせ、これと比べてしまうと「MDR-EX31BN」は「隣の部屋で歌っているの?」というレベル。お気に入りだった「テノーレ」ですら「障子の向こうで歌っているのね」という印象に落ちてしまうほど。とはいえ、ドラムが「10mほど遠ざかってしまっている」のは、どうなんだこれ。

  そうは思いつつ「オレのボーカル.mp3」を聴いている限りは、自分の生声を耳元で聴いていると思えるほどの鮮明さで、これはちょっと他に代えがたい特長ではないかと思える。確かに、オレの主な用途には見合っているのだが……なんだよもぉ、えぇい、これくださいッ!

  早速、その場で開封して帰宅しながら聴いてみたが、遮音性がかなり高いうえに、PSPの音量を最大より少し下げたくらいが丁度いいという余裕も嬉しい。

  家に帰って改めて製品について調べてみると、このイヤホンは「バランスド・アーマチュア」という、最近、流行りの発音機構を採用しているらしい。カタログスペックだと周波数帯域は20Hz~20kHz。これだけ高音がキレキレで高解像度なのに20kHz。個人的にハイレゾなんて迷信だと思っているが、ますます「ハイレゾ対応」という表示を冷めた目で見るようになりそうだ。ちなみにメーカの「EARNiNE社」は韓国の企業のようだ。最近の日韓の情勢は非常にキナくさく、個人的にはサッサと国交を断絶すりゃいいのに、くらいのことを思っているが、そういうヘンなシガラミを知らず、このイヤホンを入手できたことは非常に喜ばしい。別にプロダクトに罪はないし、メーカにも罪はない。エンジニアとして、優れたプロダクトは、単に優れたプロダクトとして認識するのが正しい姿勢だし、自分もそうあるべきだと思っている。

  気になるのは、amazonのレビューに、耐久性に問題がありそうなレビューが多いことだ。望むらくは、このイヤホンが壊れても納得するくらいの期間を愛用でき、壊れる頃には「そんな時期に買ったんだっけ、そんなこともあったよね」と思えることを……。